犯罪・刑事事件の解決事例
#不倫・浮気 . #財産分与 . #別居 . #慰謝料

妻からの財産分与請求を退けた事例

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小沢 一仁 弁護士が解決
所属事務所インテグラル法律事務所
所在地東京都 千代田区

この事例の依頼主

50代 男性

相談前の状況

不貞行為をした妻に対して離婚を求めましたが、妻は離婚に応じない態度を示しました。しかし、不貞行為をした以上、妻は離婚を争っても離婚訴訟で離婚が認められる可能性が高い状況でした。そこで妻は夫である依頼者に対し、仮に離婚するときは別居時点の夫婦共有財産を分割することを求めました。別居時を基準にすると、依頼者は妻に対し約1500万円を支払う義務があると主張しました。依頼者は、自分は被害者なのに、なぜそのように高額な金銭を支払わなければならないのかと憤りました。また、依頼者は同居していた時期に、妻に家計の管理を任せていたところ、月々の家計の予算に照らし、貯金の額が少なすぎるなどと疑問を呈しました。なお、主な夫婦共有財産は、預貯金、マンション、積立式の保険(返戻金が財産分与の対象になります)、車でした。

解決への流れ

結局協議では離婚は成立しませんでした。その後私は、どれだけ妻が悪くても、財産分与の計算では考慮できない。最悪財産分与の減額は、慰謝料で調整(相殺的な処理)をするくらいしかできない旨説明し、納得してもらったうえで離婚調停を申立てました。離婚調停においても財産分与の額が中心的な問題となり、当事者双方が資料を提出しました。このうち、マンションについては複数の業者から中立的な内容の見積もりを取得し、平均した額から住宅ローンの残額と、依頼者が購入時に支払った頭金の額を合計した額を引き、残った金額を2分の1ずつ取得することとしたため、当初妻が見積もっていた金額よりも大幅に減額することができました(当初妻は、自身に都合のよいように高く見積もった見積書を根拠にマンションの評価額を算定し、かつ、依頼者が支払った頭金を考慮せずに計算をしていました。)。また、保険については、依頼者が結婚前から加入していたことから、結婚時の返戻金の額(①)と、別居時の返戻金の額(②)をそれぞれ保険会社に計算してもらい、②から①を引いた金額を2分の1ずつ取得するとしたことで、一定程度減額することができました(当初妻は、離婚時を基準に保険を解約した場合の返戻金を2分の1を各自取得するものとして計算していました)。車については複数の業者から見積もりを取り、平均額の2分の1ずつを取得することとしました。残る問題は預貯金でした。依頼者は、妻がへそくりを貯めている、このへそくりも共有財産と評価すべきだと主張しました。確かに妻に預けていた依頼者の通帳の履歴を見ると、毎月まとまった金額を引き出している様子がうかがわれました。調停において私は妻側に対し、依頼者の通帳の履歴を全部開示するから、妻側の通帳の履歴も全部開示してほしいと求めました。しかし、妻側は別居日の預金通帳の残高証明書を提出するのみで、プライバシーを理由に履歴の開示はかたくなに拒みました。そこで私は、依頼者の通帳から引き出されている金額を見せる前に、毎月の家計のやりくりを説明するよう妻側に求めました。妻側はこれも拒否しましたが、調停委員が説得したのか、結果としてこれに応じました。すると、依頼者の通帳の履歴とは明らかに矛盾する内容の回答がされました。そこで私はこの矛盾点を指摘して、再度通帳の履歴の提出を妻側に求めました。これにも妻側は応じないため、妻が口座を開設している銀行に、取引履歴の開示を求める調査嘱託の申し立てを裁判所に対して行いました。調停では嘱託をするかは裁判所の裁量により判断され、実際に裁判所が嘱託をする例は少ないと思いますが、裁判所は嘱託をしてくれました。その結果開示された情報から、妻が隠し口座を開設していることが判明しました。その隠し口座の残高の開示を受けた結果、依頼者が妻に支払うべき財産分与はほぼなくなりました。結果として、依頼者は財産分与を支払うことなく、反対に妻側が依頼者に財産分与をすることで慰謝料の精算をすることになりました。

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小沢 一仁 弁護士からのコメント

本件のように成功する例はまれです。また、妻の家計管理等に疑問があっても、追求すべき場合とそうでない場合もあります(金額の小さい細かな出金等の内訳を全部説明しろ、そうでなければ隠しているのだと主張する人はそれなりにいますが、そのような主張は裏の取りようがないうえ、交渉を紛糾させ問題解決を遅らせるだけなので、方針として得策とは思いません)。しかし、本件では妻側の態度があまりに不自然であり、何か隠している可能性が高いと疑ってしかるべきものでした。事案に応じてメリハリのある判断をすることが重要だと思います。