1500.jpg
「会社はオレが守る」息を吐くように暴言連発、退職する部下も パワハラ上司の対処法は?
2024年12月02日 10時03分
#パワハラ #安全配慮義務 #懲戒処分 #使用者責任

転職先の上司から「会社のため」と退職を促されましたが応じないといけないのでしょうか──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の女性が転職した先の上司は、「会社のため」が口癖で、女性にも執拗にダメ出しをしたり残業を強いたりするほか、「あなたの前職はレベルが低い会社だった」「スキルもプロ意識も足りない」などと言ってきたそうです。

さらに、「あなたには会社を辞めてほしい。私はこの会社を守ります」との内容が上司からLINEで送られてきたことに女性は参ってしまったようで、もう応じてしまおうかと悩んでいます。過去にも女性と同じように上司の“追い込み”で転職者や新卒が辞めていったことがあったようです。

女性はまだ会社に相談していないようですが、どう対応するのがいいのでしょうか。上司への処分を会社へ訴えることなどは可能なのでしょうか。金井英人弁護士に聞きました。

転職先の上司から「会社のため」と退職を促されましたが応じないといけないのでしょうか──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の女性が転職した先の上司は、「会社のため」が口癖で、女性にも執拗にダメ出しをしたり残業を強いたりするほか、「あなたの前職はレベルが低い会社だった」「スキルもプロ意識も足りない」などと言ってきたそうです。

さらに、「あなたには会社を辞めてほしい。私はこの会社を守ります」との内容が上司からLINEで送られてきたことに女性は参ってしまったようで、もう応じてしまおうかと悩んでいます。過去にも女性と同じように上司の“追い込み”で転職者や新卒が辞めていったことがあったようです。

女性はまだ会社に相談していないようですが、どう対応するのがいいのでしょうか。上司への処分を会社へ訴えることなどは可能なのでしょうか。金井英人弁護士に聞きました。

●パワハラに該当する可能性ある

──上司からの言葉に辛さを感じた場合、どう対応すべきでしょうか。

上司からの「スキルもプロ意識も足りない」「あなたには会社を辞めてほしい」という発言は、一方的に相談者を非難し、辞めてもらいたいという上司の考えを示すものであって、相談者の指導のためにされた発言とは考えにくいです。

また、それによって相談者の方が働きにくくなってしまっていますので、こうした発言は「精神的な攻撃(侮辱・ひどい暴言)」としてパワーハラスメントに該当する可能性があります。

相談者の方は、職場にハラスメント相談窓口が設置されている場合はそちらに相談をすることが考えられますが、窓口がない場合、その上司以外の他の上司や、会社の代表者などに相談することになります。

会社がパワハラの防止措置を採ることは近年義務づけられていますので、相談により会社の担当者による当事者への聴き取りや、対応措置がとられることになりますが、もしそうした対応がなされない場合は、できるだけ早めに公的機関の相談窓口や、弁護士等の専門家に相談をするべきです。

なお、上司の人が人事権をもつ管理職なのか、人事権のない上司なのかによっても、上司の発言の意味が異なってきます。

管理職である場合、「会社を辞めて欲しい」というのは会社からの退職勧奨となる可能性がありますので、それが会社としての正式なものであるのか、確認をする必要がありそうです。

●パワハラ発言や損害を証明できるよう備えておく

──精神的ダメージを受けるほどの言葉を投げかけられた場合、上司に対して損害賠償を求めることは可能ですか。

上司の行為がパワハラに該当する場合、それを根拠に損害賠償請求をすることは可能です。

その場合の相手としては、上司本人はもちろん、使用者責任や雇用契約上の安全配慮義務違反などを理由に会社に対して請求をすることも考えられます。

ただ、その場合に問題となりやすい点として、パワハラにあたる発言があったことや、精神的損害が生じていることの証明の問題があります。

自分自身が上司の発言等で心理的に苦痛を感じているときは、上司の発言を録音したり、メールやLINEのメッセージを記録したりする必要があります。また、精神的に辛いときには、病院を受診するなど、自分自身の状態を知ることも大切です。

●パワハラ認定→懲戒処分「十分にあり得る」

──もし「上司にパワハラされたので退職します」と明言して部下が退職した場合、会社は部下の退職を理由に上司に懲戒処分を課すことはできるのでしょうか。

会社が従業員に対して懲戒処分をするためには、就業規則で懲戒事由を定めていることを前提に、その懲戒処分に客観的に合理的な理由があり、処分の対象となる事由から見て処分の内容が社会通念に照らして相当であることが必要です。

この点、相談者の会社に懲戒事由の規定があることを前提にしますと、会社の従業員が部下にパワハラ行為をして退職に追い込んだ場合、パワハラ行為があったことが客観的に認められるのであれば、それは他の従業員に対する加害行為(不法行為)にあたります。

さらには会社が退職者から損害賠償を請求されうる状態にもしていますので、会社に損害を与えた等の事由で懲戒処分が認められる可能性は十分にあるといえます。

なお、会社として従業員への指導や注意をする場合には、会社として無用なトラブルを避けるためにも、上司にあたる従業員から適切な指導がなされているかを監督し、パワハラにあたる可能性のある行為を未然に防止するとよいでしょう。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る