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楽曲「無断利用」は1曲1500万円!? ネット動画で「BGM」を使うときの注意点
2014年08月29日 17時26分

自分が化粧をしていくようすをYouTubeで公開し、総計10億回も視聴されている人気メイクアップアーティストのミシェル・ファンさんが、このほど、レコード会社から巨額の賠償金を請求されて、話題になっている。

BBCによると、ファンさんを訴えたのはアメリカのUltra Music社。同社は、自らが管理している楽曲を、許可なく動画のBGMとして使用されたと主張。使用された50曲について、1曲当たり8万8000ポンド(約1500万円)の損害賠償を請求している。一方、ファンさんは「過去に、同社から使用許可をもらっていた」として、徹底抗戦の構えだという。

もし日本で、他人の楽曲をBGMとして無断利用した動画をYouTubeで公開した場合、著作権法違反になるのだろうか。著作権の問題にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

自分が化粧をしていくようすをYouTubeで公開し、総計10億回も視聴されている人気メイクアップアーティストのミシェル・ファンさんが、このほど、レコード会社から巨額の賠償金を請求されて、話題になっている。

BBCによると、ファンさんを訴えたのはアメリカのUltra Music社。同社は、自らが管理している楽曲を、許可なく動画のBGMとして使用されたと主張。使用された50曲について、1曲当たり8万8000ポンド(約1500万円)の損害賠償を請求している。一方、ファンさんは「過去に、同社から使用許可をもらっていた」として、徹底抗戦の構えだという。

もし日本で、他人の楽曲をBGMとして無断利用した動画をYouTubeで公開した場合、著作権法違反になるのだろうか。著作権の問題にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

●「楽曲の演奏」と「音源の利用」は別の話

「他人の楽曲でも、その楽曲を自分でカバー演奏したり、それに合わせて歌ったりした動画をYouTubeで公開する場合、著作権法違反にはなりません」

高木弁護士はこう述べる。これは「JASRACなどYouTubeと包括契約を締結している著作権管理事業者の管理楽曲についての話」ということだが、日本で流通している有名な楽曲は対象になる場合が多いだろう。

「他方、CDなどの楽曲の音源をそのままBGMとして利用した動画をYouTubeで公開した場合、『原盤権』の侵害として、著作権法違反となってしまいます。

このように、他人の楽曲を使うといっても、『他人の楽曲を演奏する場合』と、『他人の楽曲のCDなどの音源をそのまま利用する場合』では、違いがあります」

●「著作権」と「原盤権」という2つの権利

他人の曲を使うことに変わりはないのに、カバー演奏する場合と、CDなどの音源をそのまま利用した場合で、なぜ結論が分かれるのだろうか?

「CDなどの音源には、大きく分けて『著作権』と『原盤権』という、2つの権利が含まれています。

『著作権』は、楽曲を作詞・作曲することで発生する権利です。

『原盤権』は、その楽曲をレコーディングして音源を制作することで発生する、音源についての権利です。

このうち『著作権』については、YouTubeが、JASRACその他の著作権管理事業者と『包括契約』を結んで、その管理楽曲について利用許諾を得ています。この包括契約があるため、『カバー演奏する』場合なら、動画投稿者が個別に許諾を得る必要がないのです」

●「原盤権」を持つレコード会社の許可がいる

「一方、CDなどの音源を利用する場合には、『原盤権』について利用許諾を得る必要があります。しかし、原盤権については、こうした包括契約は結ばれていません。そこで、CDなどの音源を利用するためには、個別に原盤権の権利者の許諾が必要なんですね。

ちなみに『原盤権』の権利者は、多くの場合、CDを製造しているレコード会社などです」

原盤権を侵害した場合、日本でも、高額の損害賠償を請求されるのだろうか。

「BGMで無断利用したという場合、海賊版や違法ダウンロードの場合に比べて、損害額の認定は難しいところです。ただ、少なくとも、『原盤権者がBGMとしての利用を許諾する場合の、ライセンス料相当額』は認められるでしょう」

●動画の内容が「宣伝目的」の場合は注意

「なお、JASRACの管理楽曲であっても、投稿する動画が、特定の企業や商品の宣伝目的のものである場合などは別途の手続が必要ですし、企業や団体が海外の楽曲を利用して動画を投稿する場合についても別途の手続が必要になります。

ですので、楽曲を利用する場合は、JASRACなどの著作権管理事業者のホームページで、手続が必要かどうかを確認することをお勧めします」

高木弁護士はこのように注意点を述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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