2942.jpg
「不正疑惑の説明を」東大医学部生が大学総長に送った「公開質問状」に込めた思い
2014年07月02日 18時26分

「このままでは、東大医学部で学んでいることに自信が持てない」。東京大学の医学研究者がかかわった臨床研究で「不正疑惑」があいついでいることを受けて、東大医学部の学生有志5人がこのほど、総長ら大学側に公開質問状を出した。

学生有志が質問状を送ったのは、6月23日。2日後に大学から回答があった。しかし、その返答に納得がいかなかった学生は、30日にもう一度、公開で文書を送った。彼らはなぜ、こうした行動に出たのだろうか。「公開質問状」を送ろうと呼びかけた東大医学部6年の岡崎幸治さん(24)ら、学生有志に聞いた。

「このままでは、東大医学部で学んでいることに自信が持てない」。東京大学の医学研究者がかかわった臨床研究で「不正疑惑」があいついでいることを受けて、東大医学部の学生有志5人がこのほど、総長ら大学側に公開質問状を出した。

学生有志が質問状を送ったのは、6月23日。2日後に大学から回答があった。しかし、その返答に納得がいかなかった学生は、30日にもう一度、公開で文書を送った。彼らはなぜ、こうした行動に出たのだろうか。「公開質問状」を送ろうと呼びかけた東大医学部6年の岡崎幸治さん(24)ら、学生有志に聞いた。

●「実習先で聞かれても説明できない」

「僕たちが求めているのは、不正疑惑が取りざたされている件について、そこに関わった先生たちから、学生に対して直接説明してほしい、という1点です」

岡崎さんは、こう話す。

白血病の治療薬に関する研究では、東大を通じて患者の個人情報が製薬会社に流出した。また、東大教授が主任を務めたアルツハイマー病研究の国家プロジェクトで、臨床データの書き換えが指摘された。さらに、降圧剤の研究でも、東大教授の論文に疑惑が持たれている。

「僕たちはまだ学生ですが、病院実習では直接患者さんたちと向き合う機会もあり、社会から見たら『医療者側の人間』です。実習先では『東大から来た人』として、こうした問題について聞かれたりもします。そうしたとき、ニュースや噂話をもとにしか説明できないのはおかしいと思ったのです」

身近なところで起きた、大きな「疑惑」。岡崎さんらは2月にも、疑惑が持たれている教授の一人に対して説明を求めたが、返答をもらえなかった。そのため、今回は、大学側に対して公開質問状を送ろうと考えたのだという。

「6月には、研究倫理についての『特別講義』が行われましたが、そこでも東大で今起きている問題については、スルーされました。大学側はすべてが決定するまで言及しないということなのかもしれませんが、せめて現状ぐらいは伝えてほしい」「こういった件に関わった先生方はまだ大学にいらっしゃるわけですから、メンバーである僕らも説明がほしい」

公開質問状に名を連ねた学生たちは、口々にこう話した。

●大学側は「考える会」を検討中だが・・・

「公開質問状」に対する、大学からの回答はどういう内容だったのだろうか。岡崎さんは次のように話す。

「学生が出した質問状に、きちんと返答をいただけたことについては、ありがたく思っています。大学側は、白血病の臨床研究である『SIGN研究』については、教員と学生が参加する『臨床研究の倫理と適正な活性化の方策について考える会』(仮称)の開催を、検討してくれているようです」

回答書によると、東大は他の疑惑についても、同じように調査が完了し、大学としての見解・対応が明らかにされた時点で、同様の会の開催を検討中だという。

●卒業へ向け「安心して勉強に打ち込みたい」

この「考える会」では、不十分なのだろうか?

「『考える会』が行われるのは今後、関係者の懲罰委員会を開いて、その結果が出た後とのことです。いつになるのかわかりません。

これからは僕たち6年生は、医師臨床研修マッチングや卒試、実習と、卒業へ向けてどんどん忙しくなっていく時期です。来年2月には、医師国家試験もあります。

7月の現時点で説明可能な範囲でも、やはり当事者となった先生たちから直接話を聞いて、安心して勉強に打ち込みたいと考えています」

岡崎さんはこのように話していた。

6月30日に出した2回目の「公開質問状」では、7月3日までの回答を求めている。彼らの思いは大学側に伝わるのだろうか・・・。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る