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東芝「株主総会」で現役社員がパワハラ追及、労使問題の「解決」につながるメリットも
2021年07月18日 09時08分

6月下旬に開かれた東芝の株主総会で、現役社員がマイクを握り、パワハラ問題を糾弾する一幕があった。ネット上では「そういう手があるのか」と評判になったが、はたして、どれくらい意味があることなのだろうか。労働問題にくわしい弁護士に聞いた。

6月下旬に開かれた東芝の株主総会で、現役社員がマイクを握り、パワハラ問題を糾弾する一幕があった。ネット上では「そういう手があるのか」と評判になったが、はたして、どれくらい意味があることなのだろうか。労働問題にくわしい弁護士に聞いた。

●現役社員がパワハラ問題を追及する一幕も

東芝はかつて「チャレンジ」という言葉のもとで、過大な業績目標の達成を迫る風土があったとされる。不適切な会計処理が発覚した2015年に発表された外部の第三者委員会による報告書でも指摘されていることだ。

6月25日に都内で開かれた株主総会では、会社が提案した役員人事が否決されたことに注目があつまったが、毎日新聞(7月6日・東京朝刊)によると、複数の現役社員が質問に立って、会社の経営体質やパワハラ問題について追及する一幕があったという。

記事によると、上司のパワハラでうつ病の診断を受けた男性社員は、経営陣の前で「東芝は上に甘く、下に厳しい会社であると、多くの従業員は口に出せないだけで内心思っています」と語ったという。

また、「チャレンジ」によるパワハラなどで、うつ病による労災認定を受けた女性社員も質問に立って、「体質改善が進んでいるとは思えない。パワハラを絶対しない風土を作って」と訴えたそうだ。

従業員たちは、株主となって、株主総会に参加したとみられる。こうしたケースは珍しくないのだろうか。労働問題にくわしい佐々木亮弁護士が解説する。

「上場企業の場合、従業員があえて株式を買って、株主総会に参加して発言するパターンは昔からあります。元々、従業員として会社の株を持っていて、その後、労働問題に巻き込まれて、株主総会に出席して発言するということもあります。

株主総会は、会場の周りで労働組合が労働問題について街宣することもあるなど、大きなイベントとして、そのときに問題となっている労働問題を知ってもらう機会として、かねてより注目されています」(佐々木弁護士)

●佐々木弁護士「労使問題の解決は労組を通じた話し合いが基本になる」

現役社員が株主総会で会社のパワハラ問題を追及することに、どのような意味があるのだろうか。

「上場しているような大企業の場合、なかなか、現場の声を上層部(役員クラス)に届けにくいので、株主総会であればそうした層へ届けられるという意味があります。ほかの株主に、会社にそういう労働問題があることを知らしめる意味もあるでしょう。さらに、もし役員が回答の中で、労働者にとって前向きな発言をすることがあれば、事態が動くこともありえます」(佐々木弁護士)

佐々木弁護士によると、今回のように従業員が株主総会で質問することの効果は、ケース・バイ・ケースだ。労働問題の解決の糸口につながるとよいが、やはり労働組合を通じた交渉もかかせない。

「株主総会は、基本的には年に1回です。そのときの質問だけで、目覚ましい成果が得られるというのも困難です。その意味では、労使問題の解決の基本線は、団体交渉権を有する労組と、それを応諾する義務を課せられた会社による、話し合いだと思います。

とはいえ、株主総会は株式会社の意思決定の最高機関です。役員クラスに問題を意識させる好機であることは変わりません。また、ほかの株主に問題を知ってもらうというのも大きなメリットです。限界とメリットをうまく意識すれば、解決に資することもあると思います」(佐々木弁護士)

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