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野球観戦中に「ファウルボール」でケガ 「治療費」は誰の負担になる?
2013年05月09日 19時15分

東京六大学野球が開幕し、プロ野球のペナントレースも盛り上がってきた。この季節、野球観戦に出向く人も多いだろう。目近で見る選手のプレーや、肌で感じる応援の迫力はテレビ中継では味わえない。

だがそういった「臨場感」は危険と隣り合わせだ。中でも観客席に飛んでくるファウルボールはその最たる例だろう。メジャーリーグなどでは稀にファウルボールを捕球した観客が、周囲の人から称賛されている場面を見かけるが、プレー経験のない観客にとっては自身に向ってくる打球をキャッチすることは難しいだろう。

特に最近はファウルゾーンにせり出す形で観客席が設置されることも多くなり、その危険性は以前にも増して高まっているように思える。飛んできた打球で怪我をしたという人もいると聞く。球場では「ファウルボールにご注意ください」というアナウンスも流れているが……。

もし観戦中にファウルボールが当たって怪我をした場合、怪我をした人が主催者側に治療費の支払いを求めることはできるのだろうか。野球が趣味で、法律業務のかたわら同業者の野球チームでプレーする大久保誠弁護士に聞いた。

●ファウルボールに当たっても、「自己責任」とされる場合が多い

「そもそも硬式の打球は高速ですから、観戦する者としては球の行方には常に注意を払う必要があります。もし、ファウルボールに当たって怪我をしたとしても、多くの場合は注意を怠った自己責任だと解されてもやむを得ないのではないでしょうか」

野球に詳しい大久保弁護士は、観客の注意義務についてこのように指摘する。大久保弁護士によると、ファウルボールによって怪我を負った人が球団等を被告として損害賠償を求めた裁判例が過去に2件あるが、いずれも原告の請求が棄却されたという。

「特に、楽天等を被告とした裁判は高裁まで争われましたが、一審・高裁とも請求を棄却しています。判決では、フェンスが内野席全体に設置されていることなどを挙げて、球場が通常備えているべき安全性を欠いているとは言えないと指摘するとともに、内野席フェンス上のネット部分を取り外す球場も出てくるなど、プロ野球観戦では臨場感が本質的な要素だということも理由にあげています」

では、治療費などの請求が認められる可能性は、ほとんどないのだろうか。大久保弁護士は「こうした裁判例をみる限り、請求が認められる場合は少ないと考えられます」と断ったうえで、「個別事情いかんによっては認められる場合もあるでしょう」と指摘する。

●札幌で提起された「ファウルボール事故」をめぐる裁判

実はいま、北海道日本ハムファイターズの試合を観戦中にファウルボールで怪我した人が、試合を主催した北海道日本ハムファイターズと札幌市を被告として、損害賠償を請求する裁判が行われている。札幌で開業する大久保弁護士の地元で進行している裁判だ。

「原告側の弁護士によると、札幌ドームでの日本ハム戦では、打球が観客に当たる事故が1年に約100件発生しているということです。今回の訴訟の結果がどうなるのか、注目されます」

深刻な事態を招くケースとなると話は別だろうが、札幌ドームの日本ハム戦は年間約60試合だから、約100件の事故というのは決して少ないとは言えない数だろう。観客は試合を存分に楽しむと同時に、怪我を避ける意味でも、一投一打に集中したほうが良いということかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

東京六大学野球が開幕し、プロ野球のペナントレースも盛り上がってきた。この季節、野球観戦に出向く人も多いだろう。目近で見る選手のプレーや、肌で感じる応援の迫力はテレビ中継では味わえない。

だがそういった「臨場感」は危険と隣り合わせだ。中でも観客席に飛んでくるファウルボールはその最たる例だろう。メジャーリーグなどでは稀にファウルボールを捕球した観客が、周囲の人から称賛されている場面を見かけるが、プレー経験のない観客にとっては自身に向ってくる打球をキャッチすることは難しいだろう。

特に最近はファウルゾーンにせり出す形で観客席が設置されることも多くなり、その危険性は以前にも増して高まっているように思える。飛んできた打球で怪我をしたという人もいると聞く。球場では「ファウルボールにご注意ください」というアナウンスも流れているが……。

もし観戦中にファウルボールが当たって怪我をした場合、怪我をした人が主催者側に治療費の支払いを求めることはできるのだろうか。野球が趣味で、法律業務のかたわら同業者の野球チームでプレーする大久保誠弁護士に聞いた。

●ファウルボールに当たっても、「自己責任」とされる場合が多い

「そもそも硬式の打球は高速ですから、観戦する者としては球の行方には常に注意を払う必要があります。もし、ファウルボールに当たって怪我をしたとしても、多くの場合は注意を怠った自己責任だと解されてもやむを得ないのではないでしょうか」

野球に詳しい大久保弁護士は、観客の注意義務についてこのように指摘する。大久保弁護士によると、ファウルボールによって怪我を負った人が球団等を被告として損害賠償を求めた裁判例が過去に2件あるが、いずれも原告の請求が棄却されたという。

「特に、楽天等を被告とした裁判は高裁まで争われましたが、一審・高裁とも請求を棄却しています。判決では、フェンスが内野席全体に設置されていることなどを挙げて、球場が通常備えているべき安全性を欠いているとは言えないと指摘するとともに、内野席フェンス上のネット部分を取り外す球場も出てくるなど、プロ野球観戦では臨場感が本質的な要素だということも理由にあげています」

では、治療費などの請求が認められる可能性は、ほとんどないのだろうか。大久保弁護士は「こうした裁判例をみる限り、請求が認められる場合は少ないと考えられます」と断ったうえで、「個別事情いかんによっては認められる場合もあるでしょう」と指摘する。

●札幌で提起された「ファウルボール事故」をめぐる裁判

実はいま、北海道日本ハムファイターズの試合を観戦中にファウルボールで怪我した人が、試合を主催した北海道日本ハムファイターズと札幌市を被告として、損害賠償を請求する裁判が行われている。札幌で開業する大久保弁護士の地元で進行している裁判だ。

「原告側の弁護士によると、札幌ドームでの日本ハム戦では、打球が観客に当たる事故が1年に約100件発生しているということです。今回の訴訟の結果がどうなるのか、注目されます」

深刻な事態を招くケースとなると話は別だろうが、札幌ドームの日本ハム戦は年間約60試合だから、約100件の事故というのは決して少ないとは言えない数だろう。観客は試合を存分に楽しむと同時に、怪我を避ける意味でも、一投一打に集中したほうが良いということかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

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