4574.jpg
長年連れ添った「内縁の妻」に遺族年金の支給認める判決…「本妻」はもらえないの?
2017年11月22日 10時23分

2012年に亡くなった建設会社元社長の男性(当時93)と内縁関係にあった岐阜市の女性(59)が、遺族厚生年金を不支給とした国の処分の取消しを求めた訴訟で、名古屋高裁は11月上旬、処分の取消しを命じた1審判決を支持し、国側の控訴を退けた。

報道によると、この女性は長年にわたって、男性と交際していた。男性が亡くなるまでの12年間は、女性方で同居。男性の通院に付き添ったり、介護に携わったりした。男性の死後、遺族年金の給付を国に請求したが、男性と本妻との婚姻関係が形骸化していたとはいえない、として不支給とされていた。

名古屋高裁は「2000年以降、(男性と本妻は)完全に別居し、事実上の離婚状態だった」と指摘。女性が配偶者にあたるとした1審判決を支持した。今回のように、内縁の妻が、遺族年金を受給できるのはどんなときだろうか。その場合、本妻は年金を受給できるのだろうか。中田充彦弁護士に聞いた。

2012年に亡くなった建設会社元社長の男性(当時93)と内縁関係にあった岐阜市の女性(59)が、遺族厚生年金を不支給とした国の処分の取消しを求めた訴訟で、名古屋高裁は11月上旬、処分の取消しを命じた1審判決を支持し、国側の控訴を退けた。

報道によると、この女性は長年にわたって、男性と交際していた。男性が亡くなるまでの12年間は、女性方で同居。男性の通院に付き添ったり、介護に携わったりした。男性の死後、遺族年金の給付を国に請求したが、男性と本妻との婚姻関係が形骸化していたとはいえない、として不支給とされていた。

名古屋高裁は「2000年以降、(男性と本妻は)完全に別居し、事実上の離婚状態だった」と指摘。女性が配偶者にあたるとした1審判決を支持した。今回のように、内縁の妻が、遺族年金を受給できるのはどんなときだろうか。その場合、本妻は年金を受給できるのだろうか。中田充彦弁護士に聞いた。

●「内縁の妻」も遺族年金を受給できる

「『配偶者』が遺族年金を受給することができるのは、被保険者が死亡したとき、その被保険者によって生計を維持していた場合です。

この『配偶者』には、婚姻の届を出した法律上の妻(本妻)だけでなく、事実上婚姻関係と同様の事情にある事実婚の妻(内縁の妻)も含まれます。

したがって、内縁関係にある夫が死亡した当時、その夫によって生計を維持していたといえるのであれば、内縁の妻であっても遺族年金を受給することができます」

その場合、本妻は遺族年金を受給できるのだろうか。

「できません。今回のようなケースは『重婚的内縁関係』(=法律婚と事実婚が重複する場合)といいます。このようなケースでは基本的に、法律婚の妻(本妻)が、遺族年金を受給できる『配偶者』として扱われます。

しかし、法律婚が実態を失って形骸化し、事実上の『離婚状態』となっている場合、本妻は『配偶者』と認められず、事実婚の妻(内縁の妻)が『配偶者』として扱われます」

今回のケースでも、判決が確定すれば、男性の死亡時にさかのぼって、本妻は受給権を失うことになるというわけだ。

●本妻と「事実上の離婚状態」かどうか

配偶者として扱われるかどうかのポイントはどこにあるのだろうか。

「内縁の妻にとっては、本妻の婚姻関係が『事実上の離婚状態』であることを認めてもらえるかどうかがポイントです。それがどのような状態なのかは、明確に定義されておらず、個々の事案に即して判断されます。

具体的には、(1)別居の経緯、(2)別居の期間、(3)婚姻関係を維持する意思があるかどうか、(4)婚姻関係を修復するための努力がなされたか、(5)本妻の夫への経済的依存の状況(生活費の送金など)、(6)別居後の音信・訪問の状況(食事を共にする、旅行するなど)などの事情が考慮されます。

たとえば、別居が30年以上続いたとしても、それだけで『事実上の離婚状態』と判断されるわけではありません。

本妻の立場からすると、遺族年金を受給するには、別居後も夫と連絡を取り合ったり、直接会ったり、生活費を送ってもらったりするなどして、『事実上の離婚状態』と判断されないよう行動することが重要になるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る