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父親が「愛犬」を勝手に譲渡した! ペットを取り戻せるか?
2013年02月28日 09時15分

犬、猫、ウサギ、カメ……ペットを飼っている人は多いだろう。生活をともにしながら成長を見守るペットは、いわば家族の一員と呼んでもよい大切な存在だ。では、そんな大切なペットがある日突然、自分の親によって他人に譲渡されてしまった場合、どう考えればよいのだろうか。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、可愛がっていた犬を父親の手で譲渡されてしまったという男性からの相談が寄せられている。男性によれば、父親は何の相談もなく「ペットの引き取り手が見つかったからそのつもりで」と、勝手に家族以外の人間に犬を渡してしまったという。しかもその相手は、男性のかつてのカノジョだった。

犬は、男性が元カノと同棲していたときに飼っていたもので、別れる際に彼が引き取ることになった。それなのに、自分の承諾もないまま、父親が元カノに勝手に引き渡してしまった。父親は「ここは俺の家だから」と、飼い犬を自由に処分する権利があると主張しているのだという。

この犬はもともと元カノも飼い主であったことを考えれば、彼女のもとに犬が渡ることは問題がないようにも見える。はたしてこの場合、相談者がペットを取り戻すことは可能だろうか。西田広一弁護士に聞いた。

●ペットの「所有者」は、男性か、それとも、父親か?

まず、問題となるのは、このペットの「所有者」が誰なのかということだ。その点について、西田弁護士は「ペットの所有権は男性にあります」と述べる。なぜなら、元カノと別れる際に引き取ったのは、同棲していた男性であり、その父親ではないからだ。

「たしかに父親は、家の所有者もしくは賃借人として、誰と一緒に住むのか、誰を住まわせるのか、どのように住むのかを決める権限があるでしょうから、気に入らないペットを飼うなという権利はあるのでしょう。しかし、父親にはペットの所有権や処分権限はありません。したがって、男性に了解なく、犬をその元の彼女に譲渡することはできないのです」

そこで、男性は「父親が処分権限なく行なったペットの譲渡契約は無効だ」と主張して、元カノに対して「所有権にもとづく返還請求」ができるのだという。

●男性はペットを「取り戻せる」可能性が大きい

ただ、民法には「即時取得」という規定があって(192条)、もし元カノが「父親に所有権がある」と信じてペットを引き渡してもらい、そのことについて過失もなかった場合には、ペットを自分のものにすることができる。そうなると、男性は返還請求ができなくなってしまうが、西田弁護士は「本件では、元の彼女には少なくとも過失があったと思われるので、即時取得は成立せず、男性はペットを取り戻すことができるでしょう」と分析している。

もっとも留意しておきたいのは、ペットが戻れば万事解決、というわけにもいかないことだ。

「男性がペットを取り戻した場合、父親との関係で、男性自身が家にいづらくなったり、ペットを飼いづらくなったりする可能性があるとはいえるでしょう」

優先すべきはペットか、はたまた親子関係か――。悩ましい二者択一だが、法的な権利関係を把握しておくことは、いざというときの冷静な話し合いにも役立つのではないだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

犬、猫、ウサギ、カメ……ペットを飼っている人は多いだろう。生活をともにしながら成長を見守るペットは、いわば家族の一員と呼んでもよい大切な存在だ。では、そんな大切なペットがある日突然、自分の親によって他人に譲渡されてしまった場合、どう考えればよいのだろうか。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、可愛がっていた犬を父親の手で譲渡されてしまったという男性からの相談が寄せられている。男性によれば、父親は何の相談もなく「ペットの引き取り手が見つかったからそのつもりで」と、勝手に家族以外の人間に犬を渡してしまったという。しかもその相手は、男性のかつてのカノジョだった。

犬は、男性が元カノと同棲していたときに飼っていたもので、別れる際に彼が引き取ることになった。それなのに、自分の承諾もないまま、父親が元カノに勝手に引き渡してしまった。父親は「ここは俺の家だから」と、飼い犬を自由に処分する権利があると主張しているのだという。

この犬はもともと元カノも飼い主であったことを考えれば、彼女のもとに犬が渡ることは問題がないようにも見える。はたしてこの場合、相談者がペットを取り戻すことは可能だろうか。西田広一弁護士に聞いた。

●ペットの「所有者」は、男性か、それとも、父親か?

まず、問題となるのは、このペットの「所有者」が誰なのかということだ。その点について、西田弁護士は「ペットの所有権は男性にあります」と述べる。なぜなら、元カノと別れる際に引き取ったのは、同棲していた男性であり、その父親ではないからだ。

「たしかに父親は、家の所有者もしくは賃借人として、誰と一緒に住むのか、誰を住まわせるのか、どのように住むのかを決める権限があるでしょうから、気に入らないペットを飼うなという権利はあるのでしょう。しかし、父親にはペットの所有権や処分権限はありません。したがって、男性に了解なく、犬をその元の彼女に譲渡することはできないのです」

そこで、男性は「父親が処分権限なく行なったペットの譲渡契約は無効だ」と主張して、元カノに対して「所有権にもとづく返還請求」ができるのだという。

●男性はペットを「取り戻せる」可能性が大きい

ただ、民法には「即時取得」という規定があって(192条)、もし元カノが「父親に所有権がある」と信じてペットを引き渡してもらい、そのことについて過失もなかった場合には、ペットを自分のものにすることができる。そうなると、男性は返還請求ができなくなってしまうが、西田弁護士は「本件では、元の彼女には少なくとも過失があったと思われるので、即時取得は成立せず、男性はペットを取り戻すことができるでしょう」と分析している。

もっとも留意しておきたいのは、ペットが戻れば万事解決、というわけにもいかないことだ。

「男性がペットを取り戻した場合、父親との関係で、男性自身が家にいづらくなったり、ペットを飼いづらくなったりする可能性があるとはいえるでしょう」

優先すべきはペットか、はたまた親子関係か――。悩ましい二者択一だが、法的な権利関係を把握しておくことは、いざというときの冷静な話し合いにも役立つのではないだろうか。

(弁護士ドットコムニュース)

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