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病院の都合で個室 「差額ベッド代」は支払い不要 もし払ってしまったら?
2019年10月14日 08時45分

個室に入院した場合にかかる「差額ベッド代」。実は病院の都合で利用する場合には、支払う必要がないことを知っていますか。

先日もツイッターで、「病院都合だと差額は支払い不要と聞いています」と言ったところ、病院が差額なしの部屋を用意してくれたという女性のツイートが話題となりました。

女性は入院する際に、差額のない部屋を希望していたものの、満室のために病院から「差額ベッド代として1日5000円がかかる」と同意書へのサインを求められたそう。過去に「差額ベッド代」について話題になったツイートを知っていた女性は「知らなかったらさらに2万円ポンと飛んでってたと思う」と話しています。

個室に入院した場合にかかる「差額ベッド代」。実は病院の都合で利用する場合には、支払う必要がないことを知っていますか。

先日もツイッターで、「病院都合だと差額は支払い不要と聞いています」と言ったところ、病院が差額なしの部屋を用意してくれたという女性のツイートが話題となりました。

女性は入院する際に、差額のない部屋を希望していたものの、満室のために病院から「差額ベッド代として1日5000円がかかる」と同意書へのサインを求められたそう。過去に「差額ベッド代」について話題になったツイートを知っていた女性は「知らなかったらさらに2万円ポンと飛んでってたと思う」と話しています。

●厚生労働省も病院側に通知

厚生労働省の保険局は2018年3月にも、「差額ベッド代」について病院側に通知。特別料金を求めてはならないケースとして、(1)同意書による同意の確認を行っていない場合、(2)免疫力が低下して感染症にかかる恐れがあるなど患者本人の「治療上の必要」がある場合、(3)差額ベッド以外が満床など、患者の選択によらない場合ーーの3点をあげています。

保険局の担当者は「厚生局で違反が確認された場合、ある一定の指導等が入ることがある」と話しますが、こうした事情を知らず「差額ベッド代」を支払ってしまった場合、後から病院に請求できるのでしょうか。鈴木沙良夢弁護士 に聞きました。

●患者側の同意を確認する必要がある

ーー医療機関側はなぜ差額ベッド代を請求できるのですか

日本の公的医療保険制度上、患者がある病気について保険診療と保険で認められていない診療(自由診療)を同時に受けたり、医療機関が保険診療を行いながら決められた額以上の金額を受け取ったりすることは認められていません。これが「混合診療の禁止(保険診療と保険外診療の併用の禁止)」といわれるものです。

ただし、厚生労働大臣の定める先進医療や一部のサービス等については保険診療と併用することが認められています(健康保険法第86条)。この「保険外併用療養費制度」は、患者の選択の機会を広げ、療養環境の向上のニーズが高まっていることに応じて認められたものです。

保険診療なのに医療機関側が差額ベッド代(特別の療養環境の提供)を患者側に請求できるのはこの「保険外併用療養費制度」によるものです。ただ、この制度でも「保険診療を受けるにあたって患者側が不当な負担・不利益を受けることがないように」という考えは変わりません。

そのため医療機関側には、患者の意に反して差額ベッド代がかからないようにすることが求められています。

ーー厚生労働省の保険局は特別料金を求めてはならないケースを例示しています

医療機関側には、差額ベッドでの入院を希望する患者には、設備や料金等について明確・丁寧に説明し、患者側の同意を確認し、同意の確認は文書で患者側の署名を受けることにより行うことを求められています(平成30年3月5日付保医発0305第6号)。

ただし、差額ベッド以外が満床の時は、医療機関は「常に」差額ベッド代を請求してはいけないということではありません。

満床の時でも、医療機関側が設備や料金等について明確・丁寧に説明し、患者側の同意が確認できている場合は、差額ベッド代を徴収できることになっています(厚生労働省保険局医療課事務連絡平成30年7月20日)。

●後から返還してもらうには証明を

ーー病院都合の差額ベッド代を払ってしまったとき、病院に返してもらうことはできるのでしょうか

差額ベッド以外が満床の場合で、差額ベッドの利用にあたっての説明・同意書作成がされていなかった場合や、入院の必要があるのに差額ベッド代の支払いに同意しないのであれば他院を受診するようにいわれたような場合が想定されます。

ただ、差額の返還を求める際には入院する時にそのような事情が実際にあったことが証明できる必要があると思われます。

厚生労働省も「『実質的に患者の選択によらない場合』に該当するか否かは、患者又は保険医療機関から事情を聴取した上で、適宜判断する」としています(平成30年3月5日付保医発0305第6号)。

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