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電子書籍を貸し出す「電子図書館」 普及のための法的な課題とは?
電子書籍を貸し出す「電子図書館」がもっと身近になるかもしれない。大手の印刷会社や出版社が今春から、公共図書館による「電子書籍の貸し出し」を支援するサービスを本格化させるというのだ。
紙の本と違い、電子書籍はインターネットでいつでもどこでも利用者に提供することができ、蔵書を置くスペースに悩むこともない。複数の利用者が1つの書籍を同時に読むこともできる。そんなことから、電子書籍の貸し出しサービスはどんどん普及してよさそうなのだが、そうなっていない。法律や技術の壁があるからだ。
電通の「アマビエ」商標出願、批判で取り下げ…そもそも企業の「独占」許される?
江戸時代から国内に伝わる妖怪「アマビエ」。新型コロナウイルスの感染予防のシンボル的なキャラクターとして、ネットで人気が高まり、各地で商品化されている。ところが、電通がこの「アマビエ」の商標登録を複数の分野で出願していたことがわかった。
しかし、ネットで批判が集中、電通は7月6月、商標出願を取り下げた。弁護士ドットコムニュースの取材に対して、電通は「商標の独占的かつ排他的な使用はまったく想定しておりませんでした」と説明する。
はたして、電通によるアマビエの商標登録は可能だったのだろうか。齋藤理央弁護士に聞いた。
ホームレスが売る雑誌「ビッグイシュー」 公道での「販売許可」はどうなっているの?
駅前などの路上で、ホームレスの人が販売している『ビッグイシュー』という雑誌を見かけたことがあるだろうか。『ビッグイシュー』は、ホームレスの自立支援などを目的とした雑誌。定価300円のうち160円が実際に販売したホームレスの収入となる仕組みだ。
もともとはイギリス発祥で、日本版は今年9月に創刊10周年を迎えた。毎号、著名な作家や大物ミュージシャンのインタビューが掲載されるなど、内容が充実しており、購入してみて驚いたという声もある。
さて、この『ビッグイシュー』、少々意地悪な見方をするようだが、路上で販売するにあたって、役所の届出や許可という手続きをとっているのだろうか。たとえば、東京都の路上で弁当を販売する場合には、条例に基づいて、保健所への届出などが必要になってくる。ビッグイシューの活動にたずさわっている木原万樹子弁護士に聞いた。
●「移動販売」形式であれば、道路法の「占有許可」は必要ない
「ビッグイシューの表紙をめくってみてください」
木原弁護士は、こう語りかけた。
「表紙の裏、左下に記載されている『販売者の行動規範5項』にあるように、ビッグイシューは、『移動販売』の形式をとっていますので、道路法上の占用許可(同法32条参照)等は必要ありません。
ただ、道路上の目に付くところで販売するのは確かですので、販売を開始する際は、自治体ごとに、その自治体を管轄する警察本部と、協議を行う販売方針をとっています。各地の警察に対し、十分な理解を求めたうえで、販売を行っているのです」
●生きがいを感じながら、ビッグイシューの販売を続けている
このようにビッグイシューの路上販売の仕組みを説明したうえで、その目的について、木原弁護士は次のように説明する。
「ご存じの方も多いかと思いますが、ビッグイシューは、ホームレスの人々に収入を得る機会を提供しています。販売者は、『雑誌販売』という人と接しつつ情報を発信していく仕事に生きがいを感じながら、販売を続けているのです。
ビッグイシューの販売者それぞれが、さきほどの行動規範を遵守して、人の流れの邪魔にならないよう移動しつつ、販売努力を続け、自身のホームレス状況を解消していこうとしています」
ホームレスの人々の数は減少傾向にあるとはいえ、厚労省の発表によれば、路上・河川・駅舎等での生活を余儀なくされている人の数は、2013年1月時点で8265人に上るとされる。そのようなことから、木原弁護士は次のように呼びかけている。
「ホームレスの人々が、安定した生活を取り戻すためにも、ビッグイシューを販売しているのを見つけたら、販売者に声をかけて、購入してみてもらいたいと思います」
隣家の豪華「ベランダガーデニング」で「虫さん」大発生して迷惑…やめさせるには?
豪華な一軒家の広々とした庭は無理でも、せめてマンションのベランダを「私の園」にできないか、と考えたのかどうか、クリエイティビティを遺憾無く発揮した「ベランダガーデニング」に精を出す人たちがいる。東京都心部の低層階の分譲マンションに住むナオコさん(40代)の悩みは、そんなベランダガーデニングに勤しむ隣家だ。
ナオコさんは「ご近所付き合いもないので、外から眺めるだけですが、階下から見上げても、鬱蒼と生い茂る木々、季節ごとに色合いが違う草花など、隣家はまるで植物園のようです。今の時期はゴーヤーが実っています」と話す。それだけ聞くと、マンションの外観に彩があって悪くないのでは、と思ってしまうが、ナオコさんは非常に迷惑だと感じているそうだ。
「隣家をめがけて、虫たちが集まるんです。セミ、ハチ、蝶々、黒っぽい色をした昆虫類。そして、その虫たちが我が家にも一部、迷い込んでくるわけです。ああ、こうして話すだけで嫌気がさしますね」。
高層階のマンションでは、ベランダに植物を置くことや洗濯物を干すことは安全の面から禁止しているところもあるが、7階建のナオコさんのマンションでは、そうした規定はない。しかしナオコさんは「本当に虫たちが気持ち悪いので、引っ越しも考えてしまいます。鉢植えをいくつか程度ならいいですが、生い茂らせるのはルール違反です。ガーデニングをやめさせることはできないでしょうか」と疑問を感じているそうだ。
迷惑なガーデニングをやめさせるためには、どうしたらいいのか。加藤幸英弁護士に聞いた。
中高生向け体験型法教育「ジュニア・ロースクール」仙台弁護士会が7月30日に開催
仙台弁護士会が、中学生・高校生に向けた体験型の法教育授業「ジュニア・ロースクール」を7月30日に仙台弁護士会館で開催する。
「ロースクール」と銘打っているが、難解な条文や法律用語を学ぶわけではない。身近に起きそうな法的問題を異なる立場から議論する。たとえば、高校生の部で扱うテーマは、ペットの殺処分問題。とある市で、殺処分される犬や猫の命を守るため、ペットショップを開店することが禁止になった。動物愛護と憲法上の『営業の自由』どちらが優先されるのか…。生徒たちは、動物愛護、ペットショップ双方の立場に分かれて議論する。
このほか、架空の窃盗事件をもとに、犯人と疑われている男性に実際に尋問する「模擬裁判」のプログラムも用意されている。
仙台弁護士会・法教育検討特別委員会の前田誓也委員長は、「ジュニア・ロースクールを通じて、自分とは立場・意見の異なる人と話し合うことの重要性を学び、法的思考への理解を深めてほしい」と話している。
仙台弁護士会主催のジュニア・ロースクールは7月25日まで募集を受け付けている(70名の定員になり次第、締め切り)。募集の詳細は、仙台弁護士会の特設ページで確認することができる。
「非嫡出子」の相続格差は違憲か? 弁護士が注目する「判例変更」の可能性
結婚していない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の相続分は、法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする——。明治時代から続いてきたこの民法の規定が、見直されるかもしれない。この規定の合憲性が争点となっている裁判の「特別抗告審」の弁論が7月10日、最高裁大法廷で開かれた。大法廷は主に憲法判断や判例変更などを行う場合に開かれる。
民法900条4号では、遺言などがない場合、結婚をしていない男女の間に生まれた子(非嫡出子)に認められる遺産相続の額は、法律上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)の半分とされている。この規定が憲法14条で保障される「法の下の平等」に反して、無効なのではないかというのが争点だ。
「非嫡出子の相続分を制限するのは不当な差別だ」という声は以前から上がっている。もし違憲判断が下れば、国会は法改正を迫られることになるだろう。それだけに最高裁の判断に注目が集まっている。この訴訟で注目すべきポイントを堀井亜生弁護士に聞いた。
●背景には「法律婚の尊重」という考えがあった
「今回の訴訟では、『非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1にする』という法律(民法900条4号但し書き前段)が、非嫡出子を不合理に差別するものとして違憲であると、最高裁が認めるかどうかという点が注目されます。また、違憲とした場合、どういった理由付けをするかもポイントでしょう」
堀井弁護士によると、嫡出子と非嫡出子で相続分に差をつけるこの規定は「『法律婚の尊重』という目的でつくられた」という。つまり、相続分を半分にすることで、非嫡出子が減るという考え方だ。
「今まで最高裁が合憲としてきたのも、この『法律婚の尊重・保護』という考えが背景にあります。しかし、法律がつくられた当時の状況とは、家族そのもののあり方や国民の意識など、背景事情が大きく変化しています。
また、諸外国においても非嫡出子の差別をなくす方向で立法が整備されいて、その存在意義を疑問視する声が高まっています」
●「近いうちに判例変更がなされるのでは」と注目されている
そういった批判がありながら、これまで見直しは検討されていないのだろうか?
「最高裁においても、何度もこの論点について判断が下されてきました。1995年に大法廷で合憲の判断が下された後も、小法廷において合憲判断が続いています。
一方で、合憲とする裁判官3名に対して違憲と判断する裁判官が2名と、違憲の判断に転じる状況まであと一歩のところまできています。そのため、近いうちに判例変更がなされるのではないかと注目されているのです」
では、仮に最高裁が違憲とする場合、その根拠はどうなる?
「たとえば、子どもは親を選ぶことができないので、親の行為の不利益を子が負うべきではないといった点があげられるでしょう」
相続分を半分にすることで非嫡出子が減る――。このような考えに対して、「直接的な因果関係がない」「婚外子(非嫡出子)の社会的差別につながっている」という批判がある中、最高裁はどう判断するのか。その結論は今秋にも示される見込みだ。
ホストに恋して、貢いで、裏切られた…「本当に好きだった」愛は憎しみに
「今まで彼のお店にたくさん通い、ほしいものもプレゼントしてきました。でも、彼にほかに付き合っている女の子がいると知り、腹立たしいです」ーー。ホストをしている「彼氏」のために尽くしてきたという女性から、弁護士ドットコムに悲痛な相談が寄せられました。
自分は「彼女」になったと信じて、店に通ってお金を使っただけでなく、ホストのために家賃や携帯代、車の税金なども支払っていたという相談者。さらに「親が病気だと言われてお金を渡したこともあります」といいます。しかし、彼にはほかに交際している女性がいただけではなく、「親が病気」というのも嘘だったことが分かったそうです。
「彼のことが本当に好きだったので尽くしてきましたが、今はもう恨みしかありません」と相談者はやりきれない思いを吐露しています。
「自分から出したお金は諦めますが、親が病気だと嘘をついてお金を払わせたことは詐欺にならないのでしょうか」と相談者。どう考えられるのか、古川穣史弁護士に聞きました。
児相と警察、情報の全件共有を 「救えたはずの命がある」NPOの模索
「児相が警察と情報の全件共有のうえ、連携して活動していれば、救えたはずの命がある」ーー。こう話すのは、元警察官僚でNPO法人「シンクキッズ」の代表理事を務める後藤啓二弁護士だ。
後藤弁護士は子どもの虐待死を防ぐため、児童相談所(児相)と警察がすべての虐待事案について情報を共有し、連携して活動する必要性を訴え続けてきた。
相次ぐ虐待死の事件を受け、全件共有を実施する自治体は増えつつある。しかし、東京都や千葉県、福岡県、福岡市などは後ろ向きだという。なぜ、連携が進まないのか。後藤弁護士に話を聞いた。
なぜ労組アレルギーが生まれる? 平和運動の意義は? 連合に聞いてみた
コロナ禍で出てきた多くの労働トラブル。こんなときこそ、労働組合の力が求められる。しかし、ネットを眺めてみると、労働組合に抵抗感のある人も少なくない。
たとえば、労働組合がおこなう平和運動。どうして労組と戦争反対が結びつくのだろうか。労働者をほったらかしにして、特定イデオロギーに基づいた政治活動ばかりしているのではないか――。
世間に渦巻くこうした「アレルギー」を当人たちはどう考えているのだろうか。日本最大のナショナルセンター・連合の山根木晴久氏(総合運動推進局長)に、ネットの疑問をぶつけてみた。(編集部・園田昌也)
高齢ドライバーが駐車場で「大暴走」、従業員決死の制止も振り切り計3台に衝突 SNSで話題に
群馬県館林市内の店舗駐車場で、高齢ドライバーの運転する車が次々と他の自動車に衝突していたとする「暴走事故」動画がSNS上で拡散され大きな話題となっている。
動画はすでに黒い乗用車1台と衝突した直後とみられる場面から始まる。従業員2人が駆けつけ運転席のドアを開けて止めようとするも、車は停止することなく勢いよくバック、白い乗用車に衝突した。従業員の1人が車の後ろに回っていたため、危うく挟まれそうになっていた。
衝突して止まるかとも思われたが、今度は前進し始めた。店舗方向に徐々にスピードを上げて進み、ブレーキをかける様子もなく乗用車に正面衝突。動画では、ようやく停止した車の運転席ドアを、従業員が再度開けて対応するシーンまでが写っていた。
上毛新聞(7月16日)が、85歳男性の軽乗用車が館林市内のホームセンター駐車場で計3台の乗用車と衝突したとする事故を報道。今回の動画で写っていた事故の件とみられる。店舗側は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し「けが人はいなかった」と話した。